「リスニングとスピーキング、一緒に伸ばせる方法が知りたい」
「シャドーイングって勉強法を聞いたんだけど私でもできるかな?」
「シャドーイング」という学習法を聞いたことがあるでしょうか。
シャドーイング(shadowing)とは、流れてくる英語音声のすぐ後ろを「shadow/影」のように付いて復唱することです。
長年同時通訳のトレーニングとして利用されてきた方法ですが、現在では英語学習者の間でも取り入れる人が増えてきています。
正しく学べば総合的な英語力が上がる「シャドーイング」ですが、全ての学習者におススメの学習法ではありません。
シャドーイングをするには基礎的な英語力、集中力、そして継続力が必要になります。
今回は、英語学習で「シャドーイング」を取り入れたい人のために、シャドーイング練習を始める上での適切な英語レベル・効果的なシャドーイングのやり方や注意点をお伝えします。
シャドーイングで身に付く英語力や、学習初心者に向けたシャドーイング前の具体的な学習方法も紹介するので、学習の参考にしてみてください。
この記事を書いている私は、TOEICスクールで過去100人以上の学習者にカウンセリングと個別指導を行い、多くの生徒をハイスコア取得に導いてきた経験があります。
TOEICスクールで働く前には、通訳・翻訳養成学校でディクテーション・シャドーイング・リプロダクションのトレーニングを受けて速読の力を付けてきました。
ディクテーションやシャドーイングのおかげでTOEICリスニングパートは満点を複数回取得したので、その経験を指導に役立ててきました。
シャドーイングは「我流」はあまりおススメできないので、正しい学習方法を学んでから始めることをおすすめします。
シャドーイングで身に付く3つの英語力
- ナチュラルスピードの英文を声に出していく練習→「スピーキング力」
- 自然に話す速さで読む練習→「リーディング力」
- 英語の音を集中して拾う練習→「リスニング力」
シャドーイングを続けることで、英語の「4技能(聞く・話す・読む・書く)」のうち「聞く・話す・読む」の3つの力が総合的につきます。
ただし、これは簡単なことではない上にある程度「継続」が必要になることを覚えておきましょう。
最低でも3ヵ月は毎日続けることで、実力が上がったのを実感できるようになります。
リスニング力
― 音と意味が結びつくようになる
― リエゾンや音の省略を想像できるようになる
英文を見ながら音声を聞くことで、一つひとつの言葉の音や、言葉同士の繋がりを音で分かるようになります。
また、スペルにはあるのに音声になると音が落ちる「リダクション」という現象にも慣れることができます。
【リダクション】
例えば、単語の語末のアルファベットが『P,B,T,D,K,Gの音』(破裂音)になる場合は、その文字は読まれない(聞こえない)ということがあります。
“Get back”の場合は聞こえ方としては”ゲッ バッ”となるということです。
音声を聞きながら英文を読んでいくことで、こうした英語特有の音の仕組みに気付き、慣れていくことができます。
リーディング力
音声で読まれる英文は「スピード調整」をしない場合、結構な速さです。
シャドーイングは、音声に付いていきながらテキストを目で追い英文を読み上げていくため、音声スピードで英文を読むことができるようになります。
何度も練習をすることで、音声のないテキストであっても素早く読む力が付いてくるのを実感することができます。(簡単ではありませんが・・)
スピーキング力
― 英語のイントネーション(音の強弱)
― 英語のリズムが身に付く
― 単語のアクセント・リエゾンが身に付く
「発音できない音は聞き取れない」ということを知っていますか?
英語の音声を聞きながら発音をしていくことで、今まで発音ができなかった単語や熟語の発音ができるようになり、聞き取りができるようになります。
単語のアクセントや音の繋がりだけではなく、英文全体の強弱(リズム)が身に付くようになります
抑揚をつけた読み方をするのは簡単ではありませんが、毎日続けることで少しずつ力が付いてきます。
- シャドーイングを続けるとリスニング・リーディング・スピーキング力が身に付く
- 力をつけたいのなら毎日の学習が必要。最低でも3ヵ月は続けたい
初級レベルの学習者はまずは基礎力を上げてからとり組むこと
シャドーイングは学習初心者が挑戦してみると「いっぱいいっぱい」になってしまうので英語力の向上には効果的ではありません。
初級レベルの学習者にはシャドーイングは向かない
なぜ学習初心者がシャドーイングに向かないかというと英語の基礎力である「単語」「文法」「リスニング」の力が不足しているからです。
―絶対的な単語量・文法知識の不足
シャドーイング練習をするときは、英文(スクリプト)の内容を理解しなくてはなりません。
単語量が不足していたり、文法の知識がない場合、英文の内容が分からない場合があります。
英文の意味も分からないのに、聞こえてきた英文を読む練習をしても「それっぽく聞こえる」だけで英語力は上がりません。
―リスニング力の不足
英語の音を正しく聞きとれるようにするためには、リスニング練習に時間をかける必要があります。
英語の音は日本語と比べて種類が多く、繋がる音や落ちる音があるため、日本人には聞き取りが難しいからです。
英文を聞いた時に「何言ってるのかほとんど分かんない」という状態であればシャドーイングを始めるには早いということを知っておきましょう。
初級レベルの学習者がまずやるべきこと
シャドーイングをやりたい初級レベルの学習者はまず英語の基礎力を付けましょう。
【初級レベルの学習者に必要な基礎力】
―単語、熟語の知識を増やす
―基本の文法知識を確実にする
―リスニング力を上げる
☆単語や熟語は「単語帳」または「アプリ」で毎日覚えよう
発音記号が読める人であれば単語帳で勉強するのも良いですし、手軽に単語量を増やしたい人であればアプリで暗記をしていくのも良いでしょう。
アプリの場合は音声と一緒に単語を確認することができるので、単語の発音を正確に覚えることもできます。
☆英文法の知識は中学3年生レベルまでをしっかりと
シャドーイングで使われる英文は短いテキストで十分ですが、初級レベルの学習者はそのテキスト(英文)をパッと見て、文の要素が分かるようにしましょう。
文の要素とは
「S(主語)/V(述語動詞)/C(補語)/O(目的語)/M(修飾語)」です。
「文の要素」と言われてもピンとこない人は、まずは品詞(名詞・動詞・形容詞など)の
それぞれの働きを確実に理解した上で、英語の「5文型」の理解をしましょう。
品詞の理解や5文型の理解は1,2週間も勉強すればしっかり理解できるようになります。
日頃から英文を見るときに「あ、この文は主語がここで動詞はこれだな」といった風に文の要素をスラッシュで分けていくと英語の理解が早まります。
手持ちの英語の参考書や英文コンテンツを見たときに「なんとなく読める」「英文のカタチが分かる」ようになれば英語力は付いてきたということになります。
☆リスニング力を上げるにはディクテーションがおススメ
初級レベルでなくても、リスニング力を上げるために効果的な勉強法が「ディクテーション」です。
ディクテーションは、自分のレベルに合わせた教材を利用して学習をします。
ディクテーション(書き起こし)が終わった後にシャドーイング練習をするのは学習効率がとても高いので本当におススメです。
集中して何度も聞き、書き起こした教材を読むのは、負担が少ないためシャドーイングには最適の素材になります。
- 基礎力が無い人はシャドーイングの前に単語、文法、リスニング学習を
- リスニング対策にはディクテーションも学習効果が高いのでおススメ
- ディクテーション→シャドーイングが理想の学習法
効果的なシャドーイングの基本を5つのステップで紹介
それでは、シャドーイングのやり方をみていきましょう。
「音声を聞く→話す」パートに関しては「繰り返し何度も練習が必要である」ことを
覚えておきましょう。
■シャドーイングの基本の5ステップ
- スクリプト(英文)のみを読んで意味を理解
- スクリプトを見ながら音声を聞く
- 音声を止めて、音読練習
- スクリプトを見ながらシャドーイングの練習(何度か繰り返してもOK)
- スクリプト無しでシャドーイングを練習
ステップ1: まずはスクリプト(英文)のみを読んで意味を理解する
英文を音声で聞く前に、まずは英文を読んで意味を理解しましょう。
初見で「内容がほとんど分かる」レベルの教材で学ぶのがストレスも少なく
英語力も上がりやすいのでおススメです。
知らない単語や熟語はこの時確認します。
ステップ2: スクリプトを見ながら音声を聞く
英文を見ながら音声を流してみます。
最初は目で追うのも必死ですが、何度も聞くうちに耳が慣れてくるので大丈夫です。
ステップ3: 音声を止めて、音読練習を行う
スクリプトを見ながら自分で声に出して英文を読んでいきます。
つっかえず読めるようになるまで繰り返し読んでみましょう。(最低5回)
発音に自信のない部分があれば、音声を聞いて正しく覚えましょう。
ステップ4: スクリプトを見ながらシャドーイングの練習
音声を流してシャドーイングを始めましょう。(10回以上)
最初は置いてけぼりになりますが、焦る必要はありません。
リズムやイントネーションを意識するのは慣れてからで大丈夫。
まずはスピードに慣れるために、何度も何度も練習をしましょう。
ステップ5: スクリプト無しでシャドーイングを練習
なんとかシャドーイングがついていけるようになったら、今度はスクリプト無しで
シャドーイング練習をしてみましょう。
10回以上やると慣れてきます。
その後、意味を考えながら再度繰り返しトレーニングをしていきます。
④までの部分をしっかりやっていないと、かなりキツイく感じるかもしれません。
繰り返し何度もやることで慣れてきます。
音声だけのシャドーイング練習は、イヤフォンを付けていれば移動中や散歩中でも
できるので、一旦学習を開始したらいつでも復習ができます。
☆さらに上級の練習をしたい人には「リプロダクション」も
リプロダクションとは、音声を流して一旦止め、聞こえた英文全部を
復唱するというトレーニングです。
内容の理解ができていないとリプロダクションはできないので、上級レベルの
学習法になりますが、内容を理解しつつ正確に再現する力が付くので
英語力は確実に上がります。
■シャドーイング用の教材を選ぶときの注意点、ポイント
「さっそくシャドーイングしてみたいけど、テキストはどうしたらいい?」
「日常英会話の教材やニュース教材でも大丈夫?」
現在、リスニングの学習をしている人や手元に音声付きの教材のある人は
シャドーイングの練習用に新しく教材を買う必要はありません。
シャドーイングをするための素材としては「短めの英文」で構成されて
いるものがやりやすいのでおススメです。
まずは自分の興味のある教材を使って始めてみると良いでしょう。
新しく教材を選ぶ人は下の点に注意しましょう。
□ 自分のレベルに合わせた素材(簡単な方が良い)
□ 何度もくり返す必要があるので、素材は短めの方がやりやすい
□ 音声のスピードが調節できるもの
□ 英文(スクリプト)、日本語訳があるもの
音声のスピードに関しては、英語学習者の中でも「ナチュラルスピードでやるべき」
という人と「レベルに合わせてゆっくりにするべき」という人で意見が分かれます。
教材レベルが初級者用のテキストであれば、ナチュラルスピードでも問題は
ありませんが、知らない単語が多い場合はナチュラルスピードがキツイかもしれません。
最終的にはナチュラルスピードで聞く力が必要になりますが「聞き取りが辛くてストレス」という人であれば
スピードを調整して練習しても良いでしょう。
シャドーイング練習は、飽きるくらいくり返すことで実力がつくトレーニングです。
始めて取り組む場合は、短い素材を選ぶようにしましょう。
- シャドーイングのコンテンツは基本は何でもOK! でも短めの英文がベター
- 1つの英文を30回以上は読む覚悟でトレーニングをしよう
- テキストレベルは「やや簡単」がやりやすい
まとめ
リスニング力やスピーキング力を1ランク上げたい人におススメなのが今回紹介した「シャドーイング」です。
テキストと音源だけで手軽に始めることができますが、同じ英文を30回以上くり返すことで力が付くトレーニングなので
「続けられるかどうか」がカギになります。
まずは、ディクテーションの学習から始めて、そのテキストでシャドーイングのトレーニングをするのが続けられるコツかもしれません。
続ければ続けるほど楽になるトレーニングなので、まずは3ヵ月がんばってみてはいかがでしょうか。
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